「ミス イザナミの乱行」では、乱行が行われる銭湯という刺激的な場所が登場します。
ここで、シヌノラは5人の組織の男に同時に犯されます。
これだけでも刺激的で、満足してしまう読者も多いと思います。
しかし、子細に読むとここには大きな謎があります。
5人の正体の食い違い §
この5人は、アエラ・イグマチオレストの説明によれば、以下の通りです。
- アエラ・イグマチオレスト=エージェントの当地区管理人
- イレトール=副管理官
- アナルジャン=護衛隊
- マスキー=(護衛隊)
- カークオナニン=(護衛隊)
彼の目的は、シヌノラに対して、日本人の集落を突き止めたら裏切りを許すという、極めて寛容な提案を告げることでした。
しかし、5人を射殺した後でシヌノラがトチロー達に告げたのは以下のような台詞です。
シヌノラを許す……という提案を持ってきたはずの5人が、あたかも殺しに来た殺人者であるかのように語られています。
なぜ、シヌノラは嘘をついたのでしょうか?
「5人同時に犯す」という異常さの持つ意味 §
まず、組織の5人は「和解の提案」を持ってきたにもかかわらず、シヌノラを5人で同時に犯すという酷いことを強要しています。
本当に和解したければ、このような行為は行わないのではないでしょうか?
この点は逆に向かって考えると分かりやすいと思います。
組織はシヌノラとの和解を望んでいたとしましょう。
しかし、「寛容な和解の提案」だけでは充分ではありません。シヌノラの喜ぶ「お土産」も必要でしょう。
では、どのような「お土産」が可能でしょうか?
トチローとハーロックを殺さないという提案は良い「お土産」になるでしょうが、これは不可能です。ゴーストウェスターナーの抹殺は国家レベルの要請であり、組織が独断で撤回できることではないのです。
ならば、もっとシヌノラ個人の趣味に合った何かを「お土産」にしなければなりません。
この時点で、組織はようやくシヌノラという女性の本性を理解し始めていたはずです。つまり、シヌノラとは汚れ仕事を行う下っ端の女性エージェントなどではなく、過激な性の快楽を好み、快楽を通して男を操縦できる大物だと言うことです。
従って、組織がシヌノラと和解を行うために提供すべき「お土産」は、ゴーストウェスターナーの2本の固い男性自身を上回るものでなければなりません。つまり、白人の柔らかい男性自身ならその2倍以上の本数、つまり5本の男性自身を提供して初めてシヌノラの心を動かせると考えたのでしょう。
従って、5人はシヌノラへの命令者などではなく、実際にはシヌノラを楽しませるために組織から差し出された「お土産」です。
そして、「お土産」によって与えられる快楽の中で、和解の提案が切り出されたわけです。
既に崩壊寸前だった組織 §
そもそも、なぜ組織は5人のエージェントを差し出してまで和解を行う必要があったのでしょうか?
おそらく、組織はこの時点で崩壊寸前だったのでしょう。
その理由は、それまでのトチロー達の旅が、組織の破壊しながら進行してきたことから容易に予測できます。
組織は、たかが野蛮人2名と下っ端の汚れ仕事用エージェントの計3人と侮り、結果として、逆襲の繰り返しで多くの人材を失っています。
そして、「ミス イザナミの乱行」が事実上、トチロー達に対する組織よりの最後の接触となります。
この5人が、組織の最後のエージェントとは思えませんが、実質的にゴーストウェスターナー対策に割ける最後の人材だったと考えられます。
従って、ここでシヌノラを許して協力してもらう以外に、組織が与えられた任務を全うする可能性は無くなっていたのだと考えられます。
有効だった「お土産」 §
5人に犯されつつ、シヌノラは「ひーっ」という悲鳴を上げています。
この悲鳴は、通常以上の快楽を得たときにシヌノラがあげる悲鳴だと考えられます。
つまり、5人がかりで犯すという「お土産」は、シヌノラの身体をいたく喜ばせ、シヌノラ自身も心がぐらいついた可能性が考えられます。
しかし、この状況は好ましいものではありません。
なぜかといえば、「お土産」を喜んで受け取ったという結果を残してしまうと、再びシヌノラが組織とトチロー達の間の軋轢で苦しむ可能性が出てくるからです。もし、このままなし崩し的に組織の者が定期的にシヌノラに接触してくるような事態になれば、それはそのままトチロー達の身の危険をもたらします。
従って、「お土産をもらってしまった」という事態を無かったことに精算するには、シヌノラは5人を殺す必要があったわけです。
なぜトチロー達に殺人組合員と説明しなければならないのか §
ここまで来れば理由は明らかでしょう。
仲直りしましょう……と持ちかけられ、もらったお土産を美味しく頂いた……という状況は、トチロー達には裏切りと見えるかもしれません。
ならば、5人の殺し屋に強制的に犯されたものの、殺される前に殺した……と説明する方が、信頼関係を失わないで済みます。それが嘘であることを知る者は、その場にはもう生きてはいないのです。
