最終更新: Mon Sep 12 15:30:04 2011
ここは、映画アイアンジャイアントについての感想を記すページです。
2001年3月3日に追記2を付け加えました。
2000年11月5日に追記を付け加えました。
アメリカの公式サイトと、日本の公認ファンクラブサイトを紹介しておきます。詳細はこれらを参照してください。
簡単に要約するとBrad Bird監督によるアニメーション映画です。Warner Bros.により配給されています。日本でも、字幕版と吹き替え版が劇場公開されています。しかし、アメリカ本国でも興行収入はあまり震わず、日本でも有楽町や新宿の劇場ではやっていません。
アイアンジャイアントは泣けます。見て泣いた私が言うのだから間違いありません。実際に、泣いたという体験談を語る者は多く、いちいち理屈をこねて説明する必要はないでしょう。ハリウッド製の金を掛けただけの、ありきたりの映画を見るなら、かわりにこれを見る価値があります。ですから、ともかく、アイアンジャイアントは感動的な映画である、という前提で以下の話は進めます。
実際にアイアンジャイアントを鑑賞した結果、分かったことがいくつかあります。それらを総合して考えれば、「コケて当然」と思います。「感動的」と言いつつ「コケて当然」とするのは、一見矛盾しているかのように見えますが、そうではありません。
まず、この映画のターゲットはどんな層か、ということを考えます。これは、子供であると考えるのが自然でしょう。映画そのものの作り方が、子供を主人公として、子供を楽しませる演出に満ちています。
一方、この映画の舞台は、1957年です。少なくとも、当時の世相、スプートニク、スーパーマン、東西冷戦、といったあたりの予備知識がないと、作品に入り込んでいくのは辛いところです。また、登場する軍隊の使う兵器もとうの昔に退役したものばかりです。空軍の戦闘機はF-86Fですが、現在これを見るには博物館に行くしかないでしょう。おそらく世界のどこの空軍も使っていないと思いますから、ニュースなどの報道映像に登場する機会も無いでしょう。
このことから考えると、子供が、この映画を楽しめないとしても、なんら不思議ではないと思います。
つまり、描写が、主たるターゲットとミスマッチしているという「おもいでぽろぽろ状態」にあると考えられます。本来、この映画を見るべき層の感性ではなく、作り手の大人達が子供時代を懐かしんで作ってしまったのでしょう。この状況で、子供が喜んで見に来るとは思えません。今の子供にとってのヒーローは、スーパーマンではなく、トランスフォーマーだのパワーレンジャーだのポケモンだのになるのでしょう。そうではなく、馴染みの薄いスーパーマンをキーワードに使った時点で、子供が入りにくい作品になってしまい、失敗は運命づけられたと思います。
それに対して、大人が泣ける理由は簡単です。大人が知っている子供時代の物語であり、作品そのものは大変に良質だからです。子供向け作品の形を借りた大人向けのファンタジーとして見るなら、この作品はたいへんの良い作品です。
しかし、もののけ姫米国上映関係の資料で見られる「アメリカではアニメーションは子供のものだと思われている」という指摘もある通りで、アニメーションで大人の観客に期待することは、たいへんに難しいことなのでしょう。そこから考えれば、大人の観客も大量動員できないことは明らかです。
子供も大人も動員できない映画なら、コケるのは必然だと思います。
ちなみに、トイストーリーは、スーパーマンのような特定の世代にアクセスするキーワードを使わず、古めかしい玩具のウッディ、最新のハイテク玩具のバズという象徴的なキャラクター性を軸に作品を構築しているために、世代と関係なく楽しめる普遍性を獲得できているのではないかと思います。
アイアンジャイアントそのものの評価とは別に、アイアンジャイアントを応援する人たちの声というのが気になります。
たとえば、「どうして日本でこれが作れないのか」「ロボットアニメということを考え直したい」「日本のアニメーションが忘れてしまったスピリッツがある」「日本のアニメ業界もアイアンジャイアントを見習うべきだ」というような日本のアニメを引き合いに出した意見があります。
最初に結論を書きます。私が思うに、アイアンジャイアントのような作品は日本でも作れるし、現にそういう作品はあるし、日本のアニメスタッフ(の先端的な人たち)はちゃんと考えています。
にも関わらず、こんな意見が出てくるという理由は一つしかないでしょう。要するにアニメを十分に見てないのです。映画評論のプロが見るアニメなど、ほんの氷山の一角。アニメのプロですら、すべてを見通しているとは到底言い難いところでしょう。
アニメを十分見ることができない理由は、簡単です。それが制作される本数があまりに多すぎて、そもそも全部見ることは不可能だからです。更に言えば、アイアンジャイアントのようなタイプの良質な作品は、ただでさえ地味で、話題になりにくいものです。ですから、ますます見て無くても不思議ではありません。
ところが、そういうところに思い至らない人も多いようで。日本のアニメを貶めることが当然の正義だと思いこんでいるような雰囲気があるのが、気になります。もしかして、粗暴で暴力的なレトロタイプの巨大ロボットプロレスアニメしか念頭に置いていないのでしょうか? あるいは、まだまだ、舶来信仰が残っているのでしょうか? それとも、アイアンジャイアントという対象そのものがカルト化しているのでしょうか?
アイアンジャイアントは良い映画です。一見の価値があります。しかしながら、ヒットして当然だと言うように感動の押し売りをするのはどうかと思います。はっきり言って、この映画を分かるのは、ある種の世代性を必要とします。万人がこれを受け入れることはないと思います。
また、ろくに見てもいないくせに、日本のアニメと比較するのはどうかと思います。少なくとも、日々制作される日本製アニメの半分以上を見てから論評して欲しいところです。ちなみに、半分以上を見るというのは、非常に困難な目標です。エヴァンゲリオン以後にアニメは儲かると錯覚した資本の流入によって起こった「エヴァバブル」が沈静化した今ですら、まだ相当多くのアニメが制作され続けています。このアニメ文化の層の厚さを理解せず、たまたま目に入った表層だけを見て、日本のアニメは……と決めつけないで欲しいところです。もちろん、アイアンジャイアントは大多数の国産アニメよりも優れた作品です。しかし、だからといって「日本のアニメは駄目だ」的な決めつけは、して欲しくないのです。
このページがウェブマーク21『アイアン・ジャイアント』よりリンクされたというメールが届きました。その他、宣伝も何もしていないページであるにも関わらず、いくつか感想をもらいます。ほとんどのページは、感想も来ないのが普通なので、やはりアイアンジャイアントの持つ力というべきものでしょう。私個人レベルが聞いている感想の範囲内でも、この映画は良かったという感想が多数派ですので、アイアンジャイアントが良い映画であることだけは間違いないでしょう。
ちなみに、2000年11月現在、アイアンジャイアントに影響された?ような雰囲気もあるアルジェントソーマというテレビアニメーションシリーズが放送されています。この中に出てくる宇宙から来た謎の巨大生物が、どことなくアイアンジャイアントっぽい雰囲気を感じさせます。ですが、2000年11月5日までの放送分を見る限り、アイアンジャイアントのような良心的な作りにはなっておらず、アイアンジャイアントに負けてる大多数の日本のアニメの1本という感じで受け止めています。2000年11月現在放送中(東京の地上波)の中で最も良心的と言えるのは、キョロちゃんだと思います。これは、アイアンジャイアントの前に出しても恥ずかしくない水準だと思います。単なるお菓子の宣伝アニメというレベルではありません。ロボットの出てくる作品なら、最近のメダロット魂が秀逸です。ただし、テレビアニメは生ものなので、一時期出来が良くても、別の時期は駄目ということもあるので、これを読んでいるあなたがこれらの作品を見たとき、それが秀逸であることを保証するものではないことを付記しておきます。
2001年2月11日に,新宿さくらやにて,アイアンジャイアントの日本語版正式DVDが1800円だったので思わず購入。あう,なんてこったい。英語版のDVD既に持ってるのに。でも,1800円なら迷わず買いでしょう。近所の劇場で上映してないと嘆くぐらいなら,1回鑑賞するのに相当する金額ですから,出せるはず。しかし,これこそ本来あるべきDVDの価格という気がしますね。全般的に日本のDVDは高すぎます。旧作映画ならこの水準まで落ちてくるべきです。
高畑勲監督の映画「おもいでぽろぽろ」は、ひょっこりひょうたん島を見ていた女の子が成長して、農家の青年に嫁ぐかどうか悩むストーリー。問題は、この映画が制作された時点で、これと同じ少女時代を過ごした女性達は、既に、いわゆる結婚適齢期を過ぎた中年女性になっていたということ。つまり、今、結婚をどうするか悩んでいる層はストレートに感情移入できない。そのため、農家を差別せず嫁ごうというメッセージ性が空回りしている。
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