最終更新: Sat Sep 01 17:56:21 2012
模型は作らなければ意味がない
分かっちゃいるけど時間がない
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世の中,2割の努力で8割まで達成でき,残りの2割を達成するために,8割の努力が必要とされるものである。
ゆえに,限られた時間しか持たないものは,目標を10割ではなく,8割に取るべし。これだけで,劇的に所要時間が少なくなる。
プラスチックモデルは,パーツを組み立てて形を作る形状工作と,塗装やデカールによって色づけする工程によって完成する。しかし,形の90%は既に整形済みと考えられるので,努力しなくても90%の完成度は容易に達成できる。しかし,色づけは,ほとんど行われていないキットが多い。デカールを貼るだけでは10%ぐらいしか完成度が上がらない。つまり,8割2割の法則から考えれば,既に90%の完成度を持つ形状工作に追加労力を投入しても,得るものは少ない。それに対して,そのままでは10%の完成度にしかならない色づけの分野にエネルギーを投入すれば,ちょっとした労力で模型の見栄えが大きく変わる。
ゆえに限りある時間は形状工作よりも,色づけに使え!
完成させたいと思うなら,素直に組み立てられるキットを選ぶことが最初の1歩。けして,出来の悪いキットを,俺様の腕前で修正しながら組んでやろう,などと思ってはいけない。時間が限られた人間にとって,それは未完成への第1歩になる。
精密な大スケールキットに手を出すことは絶対に不可。部品点数が多ければ,それだけ時間を食い,完成が遠のく。また,サイズが大きければ塗装に要する時間も余計に掛かる。飛行機なら,小型機で1/72,大型機は1/144。戦車は1/72〜1/76程度。ガンダムなら1/144クラスが適当。時限流に慣れたら,もうワンランクぐらい大きくても可。
パーティングライン消し,隙間のパテ埋め,ヤスリがけ,微妙なゲート処理などは,すべて禁止というのが時限流の極意である。ただし,ゲート処理をしないと部品が組めない,というような場合はちゃんと処理すること。もちろん,部品がピッタリ合う出来の良いキットを選んでいることが前提である。この手の工作は手間の割に見栄えが改善されない。そんな時間があったら,1色でも多く色を塗るべし!
基本作業をケチるとマニアやプロにはすぐばれて馬鹿にされるが,素人には分からないことも多い。もし,マニアやプロに認められたければ,いさぎよく人生を模型に掛けろ。それはできないが模型に未練ある者だけが,時限流を行う資格を持つ。
次で述べる通りサーフェイサー吹きすら無用とするのが時限流である。そのかわりとして,パーツはよく中性洗剤で洗浄すべし。歯ブラシでゴシゴシやって離型剤を落とすべし。色づけ重視で行く以上,ここだけは手間をケチるべきではない。もっとも,まともなメーカーの製品なら,そのまま塗料を塗っても,なんとかなるのも事実。キットの状態を見て行けそうなら,それでも良い。
サーフェイサーは使わない。時間節約という意味と同時に,細かい埃が床に積もるサフ吹きは,屋外など汚れても構わない場所でやらねばならず,面倒という意味もある。できればコタツから出ないで完成させることが時限流の理想である。また,時限流ではパテなどを使わないため,下地はプラの地肌そのもので,多色成型でもない限り単調である。あらためて単調な下地を作る必要はない。
塗装は筆塗りのみ。もちろん,エアブラシの器具洗浄の時間がもったいないという理由もある。だが,それ以上に大きいのは,『塗りむら』こそが,模型に大きな存在感を与えるという逆説的な事実である。ただ適当にペタペタ塗るだけで塗りむらができる筆こそが,最短時間で存在感のある模型を完成させる切り札である。
どうしても見栄えに影響する部分を除き,マスキングは禁止する。塗り分け線のシャープさなど,全体の色バランスさえ良ければ,あまり気にならないものである。
塗料は薄く塗る。もちろん,塗りむらがあって良い。下地が見えて良い。間違っても,下地を隠そうなどと努力してはいけない。厚塗りになると,乾燥が遅くて次の工程にすぐ取りかかれないし,塗装面がみっともなくなる可能性が大きい。
匂いがきつくなく,水で洗えるアクリル系塗料の利用を推奨する。乾燥の遅さは薄塗りで対処する。薄塗りならすぐ乾く。
筆の動かし方には注意する。高速で動くものなら前から後ろに。余り動かないものなら,上から下に筆を動かすのが基本。実際に塗るときは基本にとらわれず,自分がいちばんカッコイイと思う方向へ動かせ!
塗料は色を変えて最低3回ぐらい重ね塗りするべし。薄塗りでも,3回ぐらい重ね塗りすれば,プラスチックの安っぽい材質感が隠れる。また,色は重ねることで奥行きがでる。もっとも,目立たない場所や,1回塗るだけで十分に良い感じ,という場合は1回でも構わない。更に,もともとのプラスチックの地の色や質感が十分なら,目立たない場所は塗らないという選択もありえる。
薄塗りする以上下地の色が透けて見えてしまう。その点を計算して色を選ぶべき。最終的に欲しい色を,どの色とどの色の組み合わせで表現するか,じっくり検討してから取りかかる。油彩でやるように,補色を下に塗ると結果的に汚くなると書く本もあるが,そんな常識にとらわれる必要はない。自分がいちばんカッコイイと思うなら,どんな色を重ねても可。
重ね塗りが前提なので,説明書通りの色を塗っても意図通りにならない。どの色をどの順番で使うかは,説明書に頼らず,自分で考える。ただし,今ひとつどんな色か分からないときには,説明書通りの色を塗ってみるのも一つの方法である。また,最善の色を探したら説明書の指定と同じだったというケースもある。
塗り重ねすると,正確な色を出すのは難しいが,気に病むことはない。そもそも,実物も退色や光線の具合によって,いろいろな色に見えるものである。また実物に塗られている塗料とまったく同じ発色を求めてもリアルに見えないことも多い。色のストライクゾーンはけして狭くはない。零戦を濃緑色ではなく,ライトグリーンに塗ったからといって,間違いとは言い切れないのである。
薄塗りなら,繰り返し塗っても重大な問題にならない。気に入らなければ何度でも塗り直せ!
ドライブラシは筆塗りの一種であるが,手間が掛からない割に効果が大きいので,ぜひ修得すべき。
デカールは通常印刷なので,表面に均一な色が乗っている。これは筆塗りの表面と質感が大きく異なるので,デカールの上からも塗料を乗せるべき。ただし,乗せすぎて隠したら駄目。
個々の色を正しく出すよりも,全体の色バランスを良くすることを考えるべき。限られた時間を色づけに注ぎ込むと決めた以上,色のバランスを上手く取って,見る者の印象を良くしなければならない。
完成させたいという意欲が重要である。意欲を欠いたら,どんな流儀であろうと完成しない。
明日は会社があるときは,1晩1作業が基本。それでも時限流は作業数が少ないので完成する。色を1色塗ったらあとは明日にする。
時限流では,しばしば「これはかっちょいい」という模型が出来上がるが,それは多分に偶然の筆遣いに依存するものである。どんな状況でも確実に成果を出せるマニアやプロと同じ水準に達した,などと思ってはいけない。しかし,それを承知の上で,一人で自己満足に浸るのは,まったく正しい態度である。
以上
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