「ウエモンの呪い」で、シヌノラは縛られて身体の自由を奪われた上で、カマドネンとロック・ベアの女房が交わっている光景を見せつけられつつ、カマドネンの愛犬ポチに犯されます。
ガンフロンティアでは獣姦シーンは何回もあり、さほど珍しいものではありません(ただし、シヌノラが体験した獣姦はこれ1回であるため、「コミックス ガンフロンティアにおけるシヌノラのプレイ一覧 Ver: 2007/4/7」のリストに出てくる獣姦はこれ1件のみです)。しかも、馬による人間女性の獣姦という場面もあり、それと比較して犬による獣姦は最悪とまでは言えません。
それにも関わらずこれを見過ごせないのは、事後のシヌノラの台詞に深い意味がありそうだからです。
ミステリアスな台詞 §
シヌノラは全てが終わった後に以下のように言います。
もう少し早く脱獄してくれないと ほんとうに大変な事になる所だったのよ
一見すると、「犬に犯されるところだった」という抗議のようにも思えますが、「犯される」ということを、挿入されるという意味で受け取るなら、それは「手遅れだった」ことになります。明らかかに、シヌノラは犬の男性自身に貫かれた状態に陥っています。
つまり、シヌノラが恐れた「大変な事」とは、犬に挿入されることではなかった……ということです。
では、いったい何でしょうか?
犬に中出しされると大変だろうか? §
人間と犬の混血児は生まれませんが、それについての的確な知識を当時の誰もが持っていたかは分かりません。そのため、中出しされることで犬の子を孕むかもしれないとシヌノラが恐れ、それを「大変な事」と表現した可能性が考えられます。
しかし、このアイデアは否定的と言わざるを得ません。
なぜかといえば、シヌノラは妊娠の危険のある中出しを、致命的な問題とは認識していないと思われるからです。実際、平然とシヌノラは何回も中出しを受け入れているし、「大砂塵馬肉の歌」でシヌノラは妊娠を回避するために水か風呂のある場所へ早く連れて行けと要求します。つまり、シヌノラは「水か風呂のある場所」に素早く到達できれば妊娠は回避できると認識していたことになります。
つまり、犬の中出しは「ほんとうに大変な事」とまでは見なせません。
そもそも犬との獣姦とは? §
獣姦を単純に「獣姦」というひとくくりのジャンルに捉えると、身体の大きな馬の方がより大きな男性自身を持ち、それに犯されることがより過激であるという考えに陥りがちです。
しかし、獣の種類が異なれば、そこで行われる性行為の性質も変わります。
あくまで、「犬との獣姦」とはいかなるものであるかを考えてみましょう。
たとえば、犬の射精が人間の射精とは全く異なっていることを、このあたりのページで説明を行っています。
どこまで正しいかは分かりませんが、以下のような状況が起こるようです。
まず、挿入後に犬のペニスの付け根が膨らみ、ペニスが抜けにくくなります。その後、長い時間を掛けて射精が行われます。人間の男ではあり得ない長時間犯され続ける、射精され続けることで、人間女性側は精神的に打ちのめされ、犬の与える快楽に屈服してしまうとも言います。
このような状況を的確に表現したフィクション作品として、山文京伝の"Sein"より、いかにして犬が射精し、それによって女性側が犬に屈服するかを説明した部分を引用してみましょう。
犬のペニスは人間のソレとはずいぶん違っていてネ…
射精も3回に分けて行うのよ…
第1射精は大量のカウパー氏腺液…
これを放出したペニスは根本が膣内でボール状にふくらんで本格的な射精に移るの…
圧迫される膣の中でペニスはポンプの様に運動しながら同じく大量の射精を始める
大型犬ともなるとその射精は30分にもなるワ…
人間ではとても味わうことのできない快楽よ…
このヨロコビを知ったらもう
二度と犬から離れられなくなる…
そう…
牝犬になりたいと感じる様になるのよ…
「ほんとうに大変な事」とは何か? §
このように考えると、シヌノラの置かれた状況が見えてきます。
シヌノラは「人間ではとても味わうことのできない快楽」を与えられつつあったわけです。
この快楽を最後まで完全に与えられてしまったら、シヌノラは「二度と犬から離れられない」身体になってしまったかもしれません。
そうなれば、もはやトチロー達との旅も継続できないし、必死に組織に反逆してきた努力も無意味となります。犬と交わることしか考えられない「牝犬」と成り果てたシヌノラは、容易に組織によって発見され、反逆者として射殺されるでしょう。
一方、シヌノラという支援者を失ったトチローとハーロックも、彼らの旅を成功させることが難しくなったでしょう。
これは、まさに「ほんとうに大変な事」そのものです。
おそらく、性に関する体験が豊富で知性も豊かなシヌノラは自分が迎えつつある危機的状況を理解し、危機感を持って必死に抵抗していたことでしょう。
しかし、相手が長い時間を掛けて射精を行う犬である以上、最後まで抵抗を維持できるかは危ういところです。シヌノラは、それほど長い射精と向き合ったことはないのです。しかも、ポチは迷わずシヌノラを犯したことから、人間の女を犯し慣れているようにも思えます。(カマドネンはそのような遊びを常習的に行っていたのかもしれない)。人間の女を犯し慣れたポチと、犬から犯され慣れていないシヌノラの組み合わせでは、シヌノラの方が圧倒的に劣勢です。
とすれば、シヌノラはトチローとハーロックによる救援が一刻も早く来ることを期待しながら耐えるしかなかったわけです。
以下の台詞は、そのような心情のストレートな発露と考えれば、非常によく理解できます。
もう少し早く脱獄してくれないと ほんとうに大変な事になる所だったのよ
結論 §
シヌノラはトチローとハーロックを真の男と認め、組織を裏切って二人との旅を行うことを決意します。そのような観点で見たとき、他のいかなる男もシヌノラにそのような決断を起こさせなかったという意味で、トチローとハーロックのライバルにはなり得なかったと言えます。
しかし、ポチはトチローとハーロックの立場を脅かす存在になり得たと言えます。