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2009年04月23日
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生と死・この世とあの世の境界の物語

Written By: オータム連絡先

 聖凡人伝という作品は、「死」という出来事が色濃く出ています。

  • 最初のエピソードである「門出の馘」は、そもそも自殺をテーマにしたエピソードであり、主人公の出戻始も自殺志願者であった
  • 管理人の婆さんは旦那を戦争で亡くしていて、よく遺品が登場する
  • セックスコンサルタントの小久保は戦争で多くを殺し、戦友も多数死んでいる。そのことが繰返し話題になる
  • 首つり荘と大マンションは首つりの名所であり、ほとんどの登場人物は最終的に首をつる
  • ナニカはいつも鳥を捕獲して(殺して)、持ち帰ってくる
  • 早名礼子は喪服を意識させる黒い服をいつも着ている

 そのような「死」に逆らうかのように、「生」に通じる「性行為」が執拗に繰り返されるのが聖凡人伝だとも言えます。

  • 2号・妾専用の大マンションとは「性行為」用のマンションである
  • セックスコンサルタントの小久保は常に生徒の人妻と性行為を続けている
  • 早名礼子は頻繁に出戻始と性行為を行う
  • 早名礼子は出戻始以外とも当たり前のように繰返し性行為を行う
  • 首を釣る前の女達の多くは、その前に出戻始と性行為を行う

 つまり、生と死が隣り合わせに存在するのが聖凡人伝という作品と言えます。

 しかし、それだけではありません。

 主要登場人物達は、誰もが生と死の境界線上にいます。

  • 出戻始は当初自殺志願者であるが、周囲の者達が揃って死んだため死ねなくなった
  • 早名礼子は爆弾という手段によって人が死ぬことを辞さない手段で元旦那の脅迫に対抗した。我が身の破滅、おそらく最悪は死も覚悟したと考えられる
  • 小久保はもちろん戦場で死んでいた可能性がある他、やりすぎて腹上死するリスクと常に向かい合っている
  • アパートの管理人のおばさんは、連れ合いを無くしたことで、既に半分死んでいるようなものである

つまり §

 この作品は、この世でもあの世でもない世界、「この世とあの世の境界領域」を描いていることになります。その境界領域で、生から死に向かって流れる圧倒的な一方通行の濁流に必死に抵抗し、生き続けることにしがみつく者達の物語だとも言えます。

 もっと言えば、早名礼子のような美女が出戻始のような男と喜んで関係を継続することは、「この世」ではあり得ないことかも知れません。しかし、死に隣接した「この世とあの世の境界領域」ではそれがあり得ます。なぜなら、死に逆らう力を持つ男以外は、すぐにあの世に飲み込まれて消えていくからです。

 従って、この世界において「未来」は意味を持ちません。全ての時間は「あの世に飲み込まれるまでの猶予期間」でしかないからです。状態としては、生きているか死んでいるかの2つしかありません。今日と明日の差はありません。

 最終巻の最後のコマに書かれた言葉のうち半分は、このことを言っているとも解釈できます。

この話にはこの先も別にこれといった結末は無いのです。

なるようになるまで、出戻始の首吊り荘での物語は

続いて続いて果てしがないというつもりで書いて来ました。

二年や三年長いくたばるまでの時間の中では

つかの間のまぼろしに週きないというのが出戻始の信念です。

そのムチャクチャなまぼろし的生活の中で

これからのあらゆる出来事に立ち向かう気力とか

根気とかクソ度胸とかいった土台となるべきものを

身に付けてゆけるのだと信じています。

だから、あえて、この最終回でも結末はつけません。

多分、明日も来年も、ここに出戻始はいるでしょう。

"それでいいのだ"と思っています。

 つまり、「続いて続いて果てしがない」「多分、明日も来年も、ここに出戻始はいるでしょう」といった表現は、「今日と明日の差はない」という状態の言い換えとも解釈できます。

 しかし、この言葉は変化の全てを否定していません。その環境下で「あらゆる出来事に立ち向かう土台を身につける」としています。これは、なんら矛盾する話ではありません。「今日と明日の差はない」世界とは「この世とあの世の境界領域」のことを意味します。いずれ出戻始はこの世界を脱して「この世」に戻ることになるでしょう。そこは変化のある世界であり、強くなった出戻始が戦って生きるべき世界です。

余談 §

 ちなみに、最初のエピソードで自殺に出掛けるまで、出戻始は「この世」にいたと考えられます。また、早名礼子は「大マンションの女主人」で着た白いセーラー服は死に装束であり、その後で着替えて以後ずっと着ていることになる黒い服は喪服つまり「自分は死者にならず死者を見守る者になる」という意思表示とも考えられます。

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