闇夜の鴉の物語は松本零士の短編集です。
しかし、ガンフロンティアや聖凡人伝の元ネタと思われる要素がかなり含まれていて、侮れません。
対象 §
手元にあるのは講談社漫画文庫の「闇夜の鴉の物語」です。
ここによると、「空白帯のひとりむすこ」の収録の有無だけがサンコミックス版と異なります。
特徴 §
SFもの、四畳半もの、西部ものを含み、松本零士らしいと言えばらしい作品の集まり。ただし、SF+四畳半ものも含まれます。問題は死神ものと分類した作品。人間ではないが人間の姿を借りた者が人の生死に関わります。これは、長編メジャー作品にはない特徴的な作品群といえますが、ここでは直接関係ありません。
目次 §
闇夜の鴉の物語 §
死神もの。
四つの瞳 §
聖凡人伝と酷似する内容の短編。ただし、主人公の親友の男が存在する点が大きく違う。男の友達と仲良くしているとホモかと言われて距離を取って歩くのはガンフロンティアと同じ。
つるすべき多くの女 §
西部もの。女ガンマンが主人公。吊す描写、牢屋でセックスする描写、最終的に男にフェラチオを強要されるなど、ガンフロンティアに酷似する展開がある。
やけ坂のやけ酒屋 §
死神もの。
先天性充血魔 §
ヤッタラン風の主人公を持つ四畳半もの。
無偉人伝説 §
松本零士らしくない、あまり方向性が見えない作品。(実は作者自身が結末を知る者はいないと作中に書いているぐらい)
夜あるき猫 §
宇宙船だと思った場所が地上に閉鎖空間に過ぎないというSFもの。
空白帯のひとりむすこ §
四畳半から異次元に行く四畳半SF。ワダチに近いといえば近い。
四つの瞳と聖凡人伝の類似点 §
- 四畳半もの
- 主人公が出戻り
- 大家の婆さん
- 隣にセックスカウンセラー
- 隣に黒服の美女
四つの瞳と聖凡人伝の相違点 §
- 首つりは頻出しない
- 隣にあるのはマンションではなくホテル
- 隣の美女とはもともとの知り合い
- 主人公には男の金持ちの親友がいる
まとめ §
四つの瞳は聖凡人伝の原形と見て良いでしょう。ただし一部の要素はガンフロンティアに継承されます。つるすべき多くの女は多くの要素をガンフロンティアに継承したと見て良いでしょう。
非常に興味深い一冊です。