2007年07月02日
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トチロー達を追い払うシヌノラはノグソンの堅さの満足したのか?

Written By: オータム連絡先

 シヌノラに関して、まだ見落としていた問題がありました。

 ここではエピソード「荒野のサムライサーベル」について考えます。

そこにある「堅さ」の謎 §

 新聞社の尋ね人のことを聞くためにノグソンの部屋に入ったシヌノラは、ノグソンに犯されます。これだけなら、何ら珍しい話ではありません。しかし、犯されながらシヌノラは服を着た上半身を窓から出し、トチロー達に「バーで飲んでて」と告げます。つまり、トチロー達に助けを求めるのではなく、むしろじっくりとノグソンに犯されたがったようにも見えます。

 ここで気になるのは、ノグソンが「我々の組織は鉄のように固いのだ」「固いだろう」と言い、堅さを問題にしていることです。

 ノグソンは、同じ組織の人間としてシヌノラが固い男性自身を愛好していることを知っていて、自分の固さに自負を持ち、シヌノラがそれを喜ぶことを承知の上で犯したのでしょうか?

 そして、シヌノラはそれを喜び、トチロー達を遠ざけるような言葉を言ったのでしょうか?

 しかし、そのように考えると、他のエピソードのシヌノラの態度と矛盾します。

 既に、トチロー、ハーロックに後ろめたいところがある行為を目撃されたとき、シヌノラは「見ないで」と言う傾向があります。しかし、ここでシヌノラは「見ないで」とは言いません。また、ノグソンが全裸で街から追い出されたときや、斬り殺されたのを発見されたとき、特に悲しげな顔もしません。

 本当にノグソンは固かったのでしょうか?

 シヌノラはそれに満足したのでしょうか?

エピソードの内容 §

 まず、「荒野のサムライサーベル」のエピソードの内容を確認します。

  • トチロー達はウェスターナーズ・タウンに到着する
  • バーも多く、新聞のエロ小説をみんなが読んでいる良い街だった
  • トチロー達は女が死ぬ悲惨な事件2件に遭遇する
  • ベッド・マスターソンという非道な保安官がそれらの事件を解決していることを知る
  • 驚くほど早く、事件が新聞に掲載されていることを知る
  • 尋ね人の広告について聞くために、トチロー達は新聞社に行く
  • トチローとハーロックは門前払いだが、シヌノラは入ることができる
  • 新聞社の代表、ノグソンは2年目の尋ね人は前の経営者の時代だから分からないという
  • ノグソンは自分とシヌノラが同じ組織の者であることを言葉で確認してから犯す
  • シヌノラは窓からトチロー達に、先にバーに行けと告げる
  • トチロー達はノグソンの部屋に乱入して、ノグソンがシヌノラを犯している状況を察していたことを表明
  • マスターソンが更に部屋に入り、トチローとハーロックに銃を突き付ける
  • マスターソンは、トチロー、ハーロック、シヌノラの3名を連行する
  • マスターソンは牢屋にトチローとハーロックを入れ、縛ったシヌノラを犯す
  • シヌノラはマスターソンから事件の真相(新聞記事を作ってからその通りの事件を起こして素早く新聞を売る)を聞き出す
  • シヌノラはマスターソンから銃を奪い、トチローとハーロックを牢から出させる
  • そこにノグソンが来る
  • ノグソンとマスターソンは服を斬られ、全裸で荒野に逃げ出す
  • 他のエージェントに知らされるとまずい、とシヌノラは心配するが、隣町までは行けないとトチローは言う
  • ノグソンとマスターソンはサムライ・サーベルに斬り殺されているのを発見される

 ちなみに、ノグソンとマスターソンは兄弟です。マスターソンも組織の人間であるかは明瞭ではありませんが、組織のことは知っています。

増える謎 §

 実はこうしてエピソードの内容を書き出してみると、謎はもっと増えます。

  • 既にシヌノラを犯し始めているノグソンが、「エージェントの上級官には絶対服従のはずだよ シヌノラ」と、シヌノラが服従していないかのように言うのはなぜか
  • 組織の人間であるノグソンが、なぜ新聞社をやっているのか
  • 組織の人間であるノグソンが、なぜでっち上げ記事による金儲けをやっているのか
  • 組織が明確にシヌノラの裏切りを認識して殺そうとするのはずっと先なのに、なぜノグソンはシヌノラを殺すように命じたのか
  • なぜノグソンは何の前振りもなく留置場に来たのか
  • なぜほとんど伏線らしい伏線もなく、アヤメとサナエがノグソンとマスターソンを斬り殺すのか

 実は、最も大きな謎は、このエピソードの構成そのものあります。扉絵を含まない全19ページの中で、ノグソン登場まで7ページを費やしています。もし、このエピソードを「シヌノラがノグソンに犯されたので助けようとしたら逆襲されたがシヌノラの機転で逆襲」という内容だと理解すると、この構成は理解に苦しみます。

このエピソードの位置づけ §

 まず最初に行わねばならないのは、このエピソードの特異な位置づけです。

 「荒野のサムライサーベル」の手前は「女医・サン・ダウナーズ」ですが、このエピソードでは多数の日本人の標本が出現し、最後にイエロークリークから脱出した日本人のリーダー、ヒジカタの切腹自決で終わります。ここで示されるのは、近くに日本人集団がいるという強い可能性です。

 一方、「荒野のサムライサーベル」の次は「紳士タタンダール」で、ここではサナエとアヤメという2人の日本人が登場して、日本人達の町があることを告げます。

 つまり、「荒野のサムライサーベル」というエピソードは、近くに日本人の町があるという濃厚な疑いを組織が持っている状況を描いたことになります。

ノグソンの役割は何か? §

 このように考えると、なぜ組織のノグソンがこのウェスターナーズ・タウンにいるのか……という理由が見えてきます。つまり、日本人の町に関する情報収集です。そのための手段として、新聞社が有効であることは間違いありません。しかも、過去に日本人の尋ね人の広告まで出したことがある新聞社です。そこにいれば、日本人そのもの、あるいはその情報を持った者が来るかもしれません。

 もしかしたら、ノグソンは前の経営者を殺すか、あるいは暴力的に強制して経営者になった……という可能性も考えられます。その場合、前の経営者は日本人に好意的であった可能性も考えられます。

逸脱するノグソンの役割 §

 しかし、実際のノグソンは弟のマスターソンと共に、でっちあげ新聞記事を使って町を支配しています。

 これは、どう見ても組織でのノグソンの役割を逸脱しています。

 つまり、ノグソンは組織の力を利用しつつ、弟と結託して自分の欲望を満たす行為を行っていたと言えます。

組織のエージェントとしてのシヌノラ §

 組織のエージェントとしてのシヌノラは、この町のノグソンが組織の者であることを知っていた可能性があります。

 そして、ノグソンが組織を裏切っている可能性について、ベルセター射殺の新聞記事を見た時点でシヌノラは気付いたような表情で描かれています。

 ここから、物語は多重の化かし合いの様相を呈します。

 誰もが本音を隠し、建前を使い分けます。

 ノグソンには、新聞社の経営者、組織の上級官、町の支配者という3つの顔があります。

 シヌノラには、トチローの仲間、組織のエージェント、ノグソンの悪事を暴こうとする者、という3つの顔があります。

3つの顔が徐々に切り替わる §

 ノグソンとシヌノラの面会は、実はこの3つの顔が徐々に切り替わるという面白い構成になっています。

 まず、ノグソンとシヌノラは、新聞社の経営者とヤマダの消息を質問するトチローの仲間として会話を開始させます。これは奇異です。なぜなら、おそらく2人はお互いを組織の者だと知っていたはずだからです。それなのに、まるで探りを入れるように表面的な建前上の立場から会話を始めます。

 次に、2人は「組織の上級官」「組織のエージェント」という関係に移行し、ノグソンはシヌノラを犯します。

 ここで、シヌノラは「組織の上級官」「組織のエージェント」という関係を逸脱した行動に出ます。つまり、窓からトチロー達に声を掛け、自分の姿を見せます。そして、下半身は見せず、上半身は着衣のままであるのもの、ノグソンに犯されてよがる態度まで見せてしまいます。

 この時点で、シヌノラが組織の上級官に犯されているところをトチロー達に見せるのはエージェントとして不適切な行動でしょう。また、ノグソンが「絶対服従のはずだよ」とシヌノラが服従していないかのように言っていることから考えて、シヌノラはノグソンの命令に逆らって、窓から自分をトチロー達に見せたことになります。

ノグソンを疑っていたシヌノラ §

 シヌノラは、ノグソンが組織を裏切っていると疑っていたと考えられます。

 従って、組織の規律が適用されない可能性を強く意識していたはずです。

 では、それに代わって適用される規律とは何でしょう?

 それは、セルフ夫人やベルセターのように殺されて、でっち上げ記事の題材に使われる「裏の規律」でしょう。

 ということは、シヌノラは以下のような状況に置かれます。

  • 組織の規律を守ることに意味はない
  • 自分は殺される可能性がある
  • 自分を助けられるのはトチローとハーロックだけ
  • しかし、大声で助けを呼んだら即座に殺されるかもしれない
  • ノグソンを油断させるために、あえてノグソンに自分を犯させる
  • 同時に、窓からトチロー達に「先にバーに行け」と味方を遠ざける台詞を告げてノグソンを油断させつつ、自分の快感を感じた姿を見せる
  • いつもと違うシヌノラの態度に、トチロー達は即座にシヌノラのピンチを察して駆けつけることを期待できた (それほどの信頼関係を既に築き上げていた)

 このシヌノラの対処は成功したかのように見えますが、即座にマスターソンが踏み込んできて失敗します。

ノグソンはシヌノラをどこまで犯したのか? §

 トチロー達が踏み込んだとき、ノグソンのズボンは完全に閉じて描かれています。つまり、既に犯し終えた後だと考えられます。

 つまり、終わった後であるために、そのままシヌノラを手元に置く必要はなく、即座にマスターソンに払い下げたのでしょう。

ノグソンは堅いのか? §

 ノグソンは「堅い」を強調しながらシヌノラを犯し、シヌノラはそれを受け入れています。

 ノグソンは組織内の情報としてシヌノラは堅い男性自身が好きだと知っていた可能性があります。そして、自分の堅さに自信があったのかもしれません。

 それによって、シヌノラを屈服させる自信もあったのでしょう。

 ただし、そこから先は普通の男とは考え方が違う可能性があります。

 普通の男なら、屈服させたシヌノラを自分の女にしようとするでしょう。しかし、ノグソンはでっち上げ記事を作るために殺してしまう選択肢を考えていた可能性があり得ます。

 一方、シヌノラはその可能性を既に察知していて、それを実行させないためにノグソンを油断させる必要があったわけです。そこで、ノグソンの「堅いだろう」という言葉を受け入れた演技をしてみせた可能性があります。

 つまり、ノグソンの男性自身は彼が言うほど堅くはなく、シヌノラは満足していないと考えられます。

想定されるノグソンとマスターソンの行動パターン §

 シヌノラの境遇から想定されるノグソンとマスターソンの行動パターンを考えてみました。

  1. まず、生け贄となる女を捜します
  2. その女をまずノグソンが犯して楽しみます
  3. 次にマスターソンが犯して楽しみます
  4. そして、殺した上で事前に用意した新聞を発行します

 さて、ここで「生け贄となる女」というキーワードに注目しましょう。

 それはセルフ夫人のように町の女ということもあるでしょう。

 しかし、町の女ばかり殺していては、あまりに不自然です。

 必然的によそ者へのニーズが高いことになります。ベルセターもシヌノラもよそ者です。

 さて、この町の近くに住んでいるよそ者といえば誰でしょう?

 そう……、日本人です。

 相当な人数の不幸な日本人女性が、ノグソンとマスターソンの犠牲になったことが想定できます。

サナエとアヤメの謎 §

 とすると、実はサナエとアヤメの謎がクリアになります。

  • なぜ、サナエとアヤメはノグソンとマスターソンを殺したのか? その理由は同胞の惨殺者として復讐の機会をうかがっていたから。それまでうかつに手出しできなかったが、全裸で荒野を走って来たので容易に殺せた
  • なぜ、サナエとアヤメは女なのに危険な任務に出てきたのか? 殺された同胞の女性達の恨みを晴らすためなので、女性が出向く意味があったから
  • なぜ、サナエとアヤメは急にトチロー達に接触したのか? サナエとアヤメがマークしていたのはあくまでノグソンとマスターソン。彼らを退治する大きな手伝いをしたトチロー達に興味が発生したから。つまり、「荒野のサムライサーベル」→「紳士タタンダール」というエピソード順には強い意味がある

 つまり、このエピソードで描かれた真のストーリーは、サナエとアヤメによるノグソンとマスターソンに対する復讐であり、「荒野のサムライサーベル」とはトチローの刀のことではなく、日本刀を持つサナエとアヤメのことを意味すると解釈できます。

まとめ §

 最初に提示した謎に簡単に解釈を付けてまとめておきます。

  • 既にシヌノラを犯し始めているノグソンが、「エージェントの上級官には絶対服従のはずだよ シヌノラ」と、シヌノラが服従していないかのように言うのはなぜか→ノグソンの裏の顔を察知したシヌノラは服従していなかったから
  • 組織の人間であるノグソンが、なぜ新聞社をやっているのか→近くにある日本人の町の情報収集のため
  • 組織の人間であるノグソンが、なぜでっち上げ記事による金儲けをやっているのか→組織を裏切っている
  • 組織が明確にシヌノラの裏切りを認識して殺そうとするのはずっと先なのに、なぜノグソンはシヌノラを殺すように命じたのか→シヌノラが裏切り者なのではなく、ノグソンが裏切り者であり、シヌノラがそれを知ってしまったから
  • なぜノグソンは何の前振りもなく留置場に来たのか→マスターソンが女を犯し終わったら殺して記事の種にするのがいつもの手順だから
  • なぜほとんど伏線らしい伏線もなく、アヤメとサナエがノグソンとマスターソンを斬り殺すのか→同胞女性の復讐のために殺す機会を待っていたから

 というわけで、ノグソンとシヌノラは3つの顔を使い分け、描かれざる日本人女性の物語が根底に流れるという非常に込み入ったトリッキーなエピソードだったと言えます。

 一筋縄では解釈できませんが、非常に興味深い内容だと言えます。

残された謎・トチローとシヌノラの温度差 §

 実は他にも謎があります。

 トチローは、ノグソンとマスターソンを全裸にして町から追い出すだけで殺しません。他のケースでは相手を殺すことが多いのに、ある意味で手加減しています。

 一方、シヌノラは2人が他のエージェントに報告することを真剣に恐れています。

 そこに、トチローとシヌノラの温度差があります。

 これななぜでしょう?

 実は、トチローとハーロックにとって、この事件は単に留置場に入れられた……というだけの軽度のトラブルに過ぎないのです。留置場からの脱出すら、シヌノラにやってもらった状況で、彼らは何もしていません。

 それゆえに、トチローは「全裸にする」という報復でよしとしたのでしょう。もちろん、直接手を下さなくても、荒野では生きていけないという認識はあったのでしょうから、殺したのも同然です。しかし、即座に自分で手を下すまでもないと思ったのでしょう。

 一方、シヌノラはノグソンの本当の恐ろしさを知っています。組織を騙し、利用し、自分の利益をむさぼり、罪のない者達をでっちあげ事件のために殺します。そのようなノグソンが他のエージェントに報告する際、事実を告げるとは考えられません。おそらく、自分の裏切りは隠し、シヌノラの裏切りを創作を交えて大げさに伝えるでしょう。

 これはシヌノラにとっては大きな危機です。

 ここに、トチローとシヌノラの温度差が生じたと考えることができるでしょう。

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