2007年04月09日
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若いシヌノラは本当に生物学者なのか?

Written By: オータム連絡先

 シヌノラという人物を考えるときに浮かぶ典型的な疑問の1つは、「組織の生物学者」という肩書きが本物であるか否かです。

 具体的には、以下のような疑問点が出てくるでしょう。

  • 学者というには年齢が若すぎる
  • しかも女性である (後述)
  • 学者という割には汚れ仕事を押し付けられている
  • 学者という割には地方支部のリーダークラスより絶対服従を要求され、格下に見える
  • 生物学に関わる発言が皆無に近いほど見られない
  • 「荒野のサムライサーベル」では組織の規律を盾にノグソンに犯されているが、組織の学者を犯して良い規律などあり得るのか

 しかし、本質的な意味で最も重要な疑問は以下のものでしょう。

  • (人間を含むとはいえ)生物一般を研究する生物学者が、人間の人種の判定をする仕事に適任であるか?

補足・「しかも女性である」について §

 女性が学者であるということは、このガンフロンティアの作品年代推定から得られた1873年~1880年という年代推定から見ると、かなり希有な事例であると思われます。

 たとえば、有名なキューリー夫人は1867年生まれであり、この年代には既に生まれていたことになりますが、ノーベル賞をもらって社会的に認められるのは1903年以降となります。

 ちなみに、アメリカで国政選挙の女性参政権が与えられるのは1920年のことで、まだ遠い先のことだと考えられます。

 作中の年代は、南北戦争の北軍勝利によって、黒人奴隷の解放が行われた後ではありますが、男性による女性差別まで否定されてはいない時代となります。

 従って、仮にシヌノラが本当に学者であるとすれば、非常に珍しい事例であり目立ったはずです。社会的にも珍しい存在として知れ渡ったり、女性を学者として承認しない頑固な差別主義の男も出てきたはずです。しかし、そのような状況は全く見られないことからも、本当にシヌノラが生物学者であるのか、疑問が出てきます。

そもそも「生物」とは何か? §

 実は、「学者」を切り口に考えるよりも、「生物」を切り口に考える方が状況を把握しやすいのではないかと気付きました。

 つまり、「組織の生物学者」という用語の「生物」は、我々が日常的に考える「動物や植物という意味での生物」とは違う意味を持つ隠語であるということです。

 そもそも、組織の目的からすれば、組織が動物や植物を研究する必要性はほとんどありません。組織の目的(の少なくとも1つ)は、アメリカ本土に紛れ込んだ異民族を極秘裏に殲滅することです。組織が興味を持つ生物とは、異民族以外にありません。

 更に言えば、組織が欲する異民族に関する知識とは、アメリカ本土に紛れ込んだ異民族を的確に判別して殲滅するための手段に限られます。

 つまり、「組織の生物学者」とは、「異民族の判定と情報収集を行う専門家」と言い換えることができます。

 従って、これは常識的な意味での社会的に権威のある「学者」の範疇に含まれません。「生物学者」とは、組織のおける一種の隠語であり、それが指し示すのは異民族の判定と情報収集を行う組織の構成員に過ぎないわけです。

なぜ「異民族」と呼ばず「生物」と呼ぶのか §

 1873年~1880年という年代推定は、アメリカ合衆国憲法に対する以下のような修正の後になります。(アメリカ合衆国憲法より引用)

  • 修正第十三条:奴隷制廃止(1865年)
  • 修正第十四条:市民権の定義、市民の特権・免除、デュー・プロセスの権利および法の下の平等の州による侵害禁止、ならびに下院議員の規定(1868年)
  • 修正第十五条:黒人参政権(1870年)

 ということは、異民族は人ではないから殺して良い……という理屈が通りにくくなった時代といえます。しかし、差別や排斥が無くなったわけではなく、実質的には異民族排斥の勢いは衰えていません。そのような状況下で、組織は「異民族と言ってしまうと角が立つが、それでも異民族は極秘裏に殲滅しなければならない」という立場上、異民族を「生物」と言い換える必要があったのでしょう。

組織から見たシヌノラの適職 §

 組織の立場から、「組織の生物学者」に適した人物像を考えてみましょう。

 自分の人種を隠して生活する異民族を判定するには、彼が行う偽装を解除させねばなりません。それと気付かれずにそれを行う手段として、若く美しい女性は適していると言えます。その者と寝れば、相手を油断させ、相手を裸にして観察できるわけです。

 このような仕事を行うために、そのような女性には以下のような資質が要求されます。

  • 警戒心の強い異民族の心に入り込めるだけの女性的な魅力
  • 誰とでも寝られるモラルへの割り切り (それが「人間扱いされない薄汚い劣等種族」であっても)
  • 的確な判断を行う知性を持つ

 おそらく、シヌノラはこの条件を満たす希有な人材です。

 シヌノラが世間一般で言う「生物学」を履修しているか否かに関係なく、組織はシヌノラをこの役割のために組織にスカウトした可能性も考えられます。

しかし、組織での地位は高くない §

 しかし、「組織の生物学者」の地位は組織内では高くありません。

 おそらく、この仕事は組織に属する女性に与えられる仕事の中で、最も最低ランクの汚い仕事です。何しろ、「人間扱いされない薄汚い劣等種族」と寝るのが仕事ですから。

 従って、「組織の生物学者」から見た組織内の地位は低いものにならざるを得ないでしょう。

 まして、男女同権ではない時代ですから、「女性の生物学者」の地位はより低いと見て良いでしょう。もしかしたら、「女性の生物学者」よりも低い地位は組織内に存在しないぐらい、低いものかもしれません。

西部の掟と組織の掟の双方がシヌノラを犯す行為を正当化する §

 「男は殺せ、女は犯せ」の西部の掟は、西部において誰もがシヌノラを犯すことを正当化します。

 一方で、「上級者に絶対服従」という組織の掟は、組織のたいていの人間がシヌノラを犯すことを正当化します。

 それどころか、汚された身体を白人の綺麗な血で清めてやる……などという理屈で犯されることを感謝されるべきという態度すらあり得るかもしれません。

 もっと言えば、組織の性欲処理係、精液公衆便所のような扱いを受ける可能性すら否定できない話でしょう。

 これらは、「西部の掟」ではなく、「組織の掟」がもたらす状況であるため、シヌノラが西部に来る前にも適用され得る状況です。また、東武から西部に来た組織のエージェントも、同様の態度を取る可能性があり得ます。

シヌノラが亡命貴族第4世代という説が正しいなら…… §

 「タタンダールとシヌノラの関係・驚愕の父娘近親相姦説の根拠は何か?」で述べた説が仮に正しいとすれば、シヌノラは正当なフランス貴族の血筋を持ち、しかもニューヨークの裕福な不動産屋の娘と言うことになります。おそらく、何の不自由もなく、ニューヨークで暮らし続けることができたはずです。それにも関わらず、シヌノラは「組織の生物学者」になり、しかもその境遇を嫌がっているようには見えません。

 これは、シヌノラという女性を考える有力な手がかりになるかもしれません。

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